小出裕章「福島原発事故の収束も見えない中、原子力で生きてきた私には重い責任がある」

独占激白! 原発依存、国民監視…「今の日本は戦前と同じだ」
引用 毎日 2016年7月6日
 昨春、京大原子炉実験所を助教のまま定年退官し、「仙人になる」と長野県に転居した小出裕章さん(66)。原発が争点にならない参院選に「政治嫌い」という小出氏は何を見ているのか。

(構成/ジャーナリスト・粟野仁雄)

 日本列島には中部地方から関西、四国を通って九州南西部まで貫く中央構造線という巨大な活断層があります。小松左京さんのSF小説『日本沈没』(1973年)はその中央構造線が割れ、日本列島の南側が太平洋に沈んでいくストーリーですが、中央構造線は愛媛県・佐田岬(さだみさき)半島の伊方原発のすぐ北を通ります。

 伊方原発の設置許可取り消し訴訟は1973年秋から始まり、私も住民側の証人になりました。同時に裁判と並行して、私は原発近くの海の泥の放射能汚染調査を始めたのです。地元には「磯津公害問題若人研究会」というグループがあり、漁民も参加していましたので、海の汚染を公表するのは勇気のいる選択でした。

 私たちの調査では、取水口側より放水口側のコバルト60の濃度がずっと高かった。四国電力が汚染水を流していても、県や四電の調査では一度も検出されない。彼らの測定機器は私たちのより精度が低かったのです。しかし、汚染結果を公表したため、さすがの四電も海へ流す放射能の量を減らすべく努力するようになった。けれど、私がかかわった伊方原発1号機に対する裁判は敗訴しました。

 ただし、福島第1原発事故を受け、2011年に新たな運転差し止め訴訟が起こされています。佐田岬の根元に位置する伊方原発で事故が起きれば、そこから先の住民は絶対に逃げられません。県は大分県へ船で避難することを想定していますが、海が荒れたら終わりなんです。

 原発を巡る裁判では14年5月、大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた訴訟は1審・福井地裁で勝訴した後、現在名古屋高裁で審理中です。再稼働した高浜原発3、4号機の運転を差し止めた仮処分決定に対する関西電力の執行停止の申し立ては今年6月、大津地裁が却下しました。決定の取り消しを求めた異議審も同じ裁判長の担当だけに、却下される可能性が高い。

 しかし上級審になるほど裁判所は体制寄りになるので、高裁まで行けば判断がどう変わるかはわかりません。司法も行政、電力会社と一体化して原発を動かす方向に流れる可能性が高いと私は思います。

 さらに原子力規制委員会が、高浜原発1、2号機について最長20年の延長稼働を認めたことは看過できません。田中俊一委員長は「耐用年数40年」との原則を定め、それを超えた認可は「例外」としたのです。ところが、例外とする確かな根拠もない。これでは原則を設けた意味がない。さすが“原子力ムラ”の住民で固めた原子力規制委員会と思うしかありません。

 福島では避難指示が解除され、住民の帰還が始まった自治体も増えました。放射能汚染を別の場所に移しただけの「移染」なのに、「除染」と称して安全と偽り、住民を戻す背景には「原子力緊急事態宣言(※)が有効な間に戻せ」という政府の本音があります。

 日本が法治国家なら、普通の人が立ち入れない放射線管理区域に人を戻してはいけない。ところが緊急事態宣言が解除されていないから戻せる。11年12月、当時の民主党政府は事故の収束を宣言しましたが、それならまず、緊急事態宣言こそ解除すべきだったのです。

 福島原発事故では、科学者を含む“原子力ムラ”の住人は何を起こしても処罰もされないし、責任も取らずに済むということが図らずも証明されてしまった。もし、事故の責任を問われて刑務所に行くかもしれない、となったら誰も再稼働など指示できません。

 田中委員長は川内原発について「新基準に適合している」としながら、「安全とは申し上げない」と逃げました。どんな構造物も「ゼロリスク」はありえず、この言い方は技術を操る者としては当然です。けれど、「基準に合致した」と言えば、安倍首相に「安全性を確認した」と論理をすり替えられる。委員長の立場ならそのことは承知のはずですから、田中委員長は責任を逃れ得ません。

 一方で、「核のゴミ」の問題は全く進展がない。

 政府が考えている高レベル放射性廃棄物の地層処分、使用済み核燃料を地下に埋める方法はやってはいけません。地下で10万年、100万年と安定させなくてはならず、それを保証できる科学は存在しない。「じゃあ、どうするのか」と問われたら、「わからない」と答えるしかない。そもそも自分で始末できないゴミを作ることが間違い。これ以上、ゴミを出さない決断をして、既にあるゴミの処理を考えるべきです。

 現状では、地上にコンクリートで保管する乾式キャスクしかないと思います。容器の蓋(ふた)はパッキンで封印されますが、劣化して放射性物質が漏れる。頻繁にパッキンを交換すれば、取り換え作業で被曝(ひばく)労働が増えてしまう。それでも、地下に埋めて目に触れなくする方がよほど怖い。常に監視できる状態に置くべきです。

「簡単に仙人にはなれません」
 参院選が公示されましたが、政府の閣議決定によれば、30年時点での原発依存度が20~22%。実現するには、現在停止中の原発を全て再稼働しても足りない。必然、新規増設となります。それなのに原発が争点になっていないのは残念です。

 もっとも、私自身は1強の自民党に抗するべく、野党は結集すべきだと考えていました。1人区で野党統一候補が実現した以上、あえて原発を争点にすることで、それぞれ原発へのスタンスが異なる野党が分裂する事態は避けなければならないでしょう。

 敗戦から4年後に生まれた自分は「戦後世代」と思っていましたが、昨年7月に安全保障関連法が可決、成立するなど、今の日本は「戦前だ」と気付きました。近いうちに日本が戦争に引きずり込まれるのではという危機感があります。

 大学で教壇に立つ時もありますが、事務局が「マイナンバーを出せ」と言ってくる。何であんなものを唯々諾々と受け入れるのか。自治を認められた大学までが率先して提出しろなんて、本当に危うい時代です。私は拒否できても、普通の会社勤めをする人は出さないとどうなるかわからない。個々の労働者が抵抗できない状況を政府が作り上げていく恐るべき監視国家です。

 俳人の金子兜太(とうた)さんや作家の澤地久枝さんの呼びかけで毎月3日、JR松本駅前で「アベ政治を許さない」というポスターを持って立ち、「戦争反対」「原発反対」を訴えています。退官する際、「(俗世間と離れた)仙人になりたい」と言いましたが、簡単にはなれません。福島原発事故の収束も見えない中、原子力で生きてきた私には重い責任がある。「私でなければ」という仕事を厳選し、やれることはやっていきたい。

 ※東海村臨界事故(1999年)を受け、2000年に施行された原子力災害対策特別措置法によって規定される。重大事故の通報を受け、内閣総理大臣が宣言、自治体や事業者などを指揮する権限を持つ。福島第1原発事故当日の2011年3月11日に発令された。

 ■人物略歴

こいで・ひろあき
 1949年生まれ。東北大工学部大学院修了。専門は原子力工学。2015年3月、京大原子炉実験所助教を退官。著書に『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)、『原発のウソ』(扶桑社新書)など

(サンデー毎日2016年7月17日号から)


私も小出さんをいろいろ批評してきたがやはり、涙無くして、感無量だ!

勝てる日は来るのか?


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テーマ : 「原発」は本当に必要なのか
ジャンル : 政治・経済

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No title

え!?小出さん批評できる所が有る??
俺にはない!!全て賛成だ!!

Re: No title

あんたも相当なアホ

小出「福島の一次産業を守るために大人は農作物を食べるべきだ」
2011年の夏のまだ汚染実態も濃度もよくわからない時にこういうことをいうのは、
科学者らしからぬトンデモだろう
この時から小出批判は歯に衣着せぬ徹底罵倒 熊取も今中も

瀬尾さんの汚染地図の被害予測の再検証を後輩の小出がするべきだとまで
批判したが、講演会ばかりで進歩はなかった

原子炉まわりや被ばくの実態も小出からは途中からなし
当初の「小出さんこんばんは」「はい、こんばんは」のラジオも鋭さが消えて行った

莫大な初期被曝を避けて避難するべきだの声はなかった
「避難すれば家庭が崩壊する」「避難しなければ肉体が崩壊する」「私は呆然と立ちすくむしかない」

こんな優柔不断では初期被曝をくらってわからないヒバクシャとなってしまう


ま、いろいろあったがもう過去の話で懐かしく思い出される あの時は燃えに燃えて小出批判をしながら
原発問題の真実解明にいそしんだものだ



もう仙人になったのだから、言うべきことはない

彼は永遠の少年だ 純粋純真だ



放射能はいらない
『推進派はいつも自然も人工も放射線は同じだと言う、【成る程その通りだ。 しかし、問題は放射線ではなく、人工放射性核種は濃縮する事にあったのだ】 』
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